1. ホーム > 
  2. 海のはなし > 

レポート:レジンペレット漏出防止対策について ~インタビューと記事~

2010年09月16日 カテゴリ:2008 , クリーンアップレポート

※「クリーンアップキャンペーン2008レポート」(JEAN/クリーンアップ全国事務 局、2009年4月発行)より転載。この原稿は2009年に執筆されたものです。 

< 日本プラスチック工業連盟の取り組み >
< クラドレン ~ たこ足フィルターについて >


 日本で市民参加による海岸のごみ調査(ICC)が初めて行われたのは1990年でした。翌年の1月に、この活動を継続していくための事務局としてJEAN/クリーンアップ全国事務局が設立され今日に至っています。
 その年の春のキャンペーンに、ICCの主宰者であるアメリカのオーシャン・コンサーバンシーから担当者を二人招聘しました。全国事務局が主催する会場である神奈川県藤沢市の鵠沼海岸で、OCのキャシーさんが示したのは、砂浜に無数にちらばるプラスチックの粒。彼女は、「なんでこれがこんなに沢山落ちているの!?」と強い調子で言いましたが、その意味がわかりません。聞けば、それはプラスチック製品の中間材料であるレジンペレットというもので、加工工場などから管理不十分などの理由で漏出し、海岸に漂着したらしいとのこと。アメリカでも以前に問題視され、プラスチック工業会が工場などの排水口にスクリーンを設置するなどの対策を指導した結果改善したというのです。キャシーさんからは、「この海岸にこれほど大量にある理由としては、不特定多数の排出源が近くにあるのかもしれない。実態調査をすべき」と強く勧められました。
 レジンペレットなるものの存在を初めて認識した私たちは、後日あちこちの海岸にでかけては、レジンペレットの有無を確認したり、海岸で集めたレジンペレットをサンプルとして全国のキャプテンに送って「レジンペレット探偵団」への参加を要請し、秋のICCで見つかったら報告してほしいと頼みました。すると海岸だけではなく、河川や湖のキャプテンからも次々と発見の報が届き、並行してマスコミも大いに注目して「新たな海岸汚染ごみ」として報道が相次ぎました。
 日本プラスチック工業連盟(以下 プラ工連と略)からは、早速調査をしたい、実態を知りたいので海岸を案内してほしいとのご連絡がありました。何箇所かの海岸をご案内し、OCのスタッフからの説明や、JEANのネットワークで把握していた情報などをお伝えして以来、機関紙やレポートをお送りしたり、連盟としての対策についてお知らせいただくなどの情報交換が続いています。JEAN主催の専門家会議で、レジンペレットをテーマに取上げた際には、連盟からもご参加いただき、レジンペレットを製造している企業の工場見学や、漏出防止にむけた意見交換なども実現しました。
 プラ工連では、日本の国内の実情を独自に調査された上で、アメリカのプラスチック工業会の取り組みを参考に、独自の「レジンペレット漏出防止マニュアル」を作成し、会員企業に配布して、注意喚起と漏出防止に取り組んでいます。
マニュアルが完成した当初は、プラスチック業界が迅速な対応をしたことによって、早晩漏出が減り、海岸等への漂着も少なくなるものと期待されました。しかし、日本ではアメリカとは違って、プラスチック製品の材料以外にも多用されている(ぬいぐるみの詰め物など)こともあり、漂着量が目に見えて減るには至っていません。
 プラ工連としても、この現実には苦慮されているとのことですが、最近の取り組み状況についてあらためて、総務・環境部長の猪瀬さんにお話しを伺いました。

**以下、猪瀬さん談**

 平成21年度から、中学校でプラスチックに関する学習が行なわれることになり(1単元)、プラ工連では、それに向けてHPに新たなページを設けることを検討中です。プラスチックは実にいろいろなところで使われているものですが、その性質や特徴などはかならずしも一般には充分理解されているわけではありません。学校の授業で学ぶ機会ができたことは、嬉しく思っていますし、その手助けにもなるようにと新しく中学生が見てもわかりやすいページとするよう考えています。


 レジンペレットの漏出防止マニュアルを作って、会員企業への配布をしてから、3、4年に一度の頻度でアンケート調査を行なっています。レジンペレットの製造から、流通、材料としての使用など、さまざまな場面ごとに、漏出防止のための注意や、意識向上につながるような対応方法をマニュアルで示していますが、企業や事業所での対応状況などを確認し、アンケートを通じて注意喚起を継続するという狙いがあります。今年(2009年)は、アンケートを実施する予定です。
 レジンペレットの漏出に限らず、環境問題はたいへん重要な課題だと考えています。3Rの促進や、カーボンオフセットなどいろいろな取り組みがありますが、プラスチックのリサイクルは、一般消費者にとってはモノに戻るのがリサイクルというイメージだと思います。工場などから出てくる産業系の廃プラスチックで種類、グレードがはっきりしているものは、プラスチック製品に戻す、いわゆるマテリアルリサイクルが経済ベースに乗った形で盛んに行われています。しかし家庭から出てくる容器包装プラスチックなどは、種々のプラスチックが混じっていること、食品残渣などの汚れが付着していることなどの理由で、マテリアルリサイクルを行うことは非常に難しく、有効な再利用が行われているとはいえない状態です。容器包装リサイクル法では、マテリアルリサイクルだけではなくコークス原料・高炉の還元剤として利用するケミカルリサイクルや、固形燃料として再利用するサーマルリサイクルなどが手法として認められています。容器包装用のプラスチックの中でもPETボトルや、PSの食品トレイは識別しやすいので分別回収してマテリアルリサイクルすることが、ほかのプラスチック容器に比べるとうまく進んでいます。
 レジンペレットの漏出削減対策としては、プラ工連の会員企業へのマニュアル配布と注意喚起のためのアンケート調査の実施は続けていますが、連盟の会員企業は大手のところがほとんどで、環境対策などは元々よく配慮されていました。しかし、レジンペレットの最終ユーザーである加工工場の多くは、規模が小さく、会員企業ではない場合が圧倒的に多く、情報の伝達が困難な現状があります。(JEAN注 この現状をうけて、以前に環境省がマニュアルの内容を抜粋したチラシをつくり、都道府県窓口で配布したことがあるが、どの程度当の事業所に届いたかは不明)
 また、製品材料以外の用途に使われているレジンペレットの、使用状況や、管理状態、廃棄方法などはつかみきれていません。

**以上、猪瀬さん談**

 問題意識を持ちながらも、プラ工連として実施できることの限界もあるとのことでした。JEANでは今後も情報の提供や、折に触れて意見交換などを続けていきたいと思っています。また、企業が独自に漏出防止に貢献すべく開発した製品情報などを、JEANからも積極的に紹介して、改善へのヒントを広めるために協力していきたいと思っています。

***

*漂着するレジンペレット対策とたこ足フィルターについて
 レジンペレット漏出防止の対策の一つに、事業所ごとに、排水溝にスクリーンや金網をとりつけて、事業所から出るレジンペレットを回収するというものがあり、私たちもそれで一定の効果があるのだろうと思っていました。 2月はじめにクラレプラスチックスの藤田さんから、現場で効果のあるものを作ったので、実物をみて意見を聞きたいとご連絡をいただきました。平面的なフィルターやスクリーンでは、すぐに目詰まりを起こしてしまうなどの問題があったそうですが、今回開発した製品では、相当の改善ができ、状況が良好だということが実験をみてよくわかりました。
 レジンペレットは、製品材料以外の用途にも多用されていることがわかっており、そのためもあってなかなか海岸漂着の現状が変わりません。こうした改善用の製品情報を、JEANからも発信していきたいと寄稿をお願いしました。

 

 


<クラドレン>たこ足フィルターとは~ 一般的な面状の金網フィルターと比較して ~

クラレプラスチックス株式会社 ゴム・化成品事業部 生産部 商品開発課 藤田 明 

1.構造的な特長
 この製品は、メッシュで作られている管を、たこ足のように多数本持っている三次元構造です。その結果、従来の面状の金網と比較して、ろ過面積が飛躍的に大きくなっています。これは、浄水器などのストレーナー(ろ過装置)でよく見られる形態で一般的にゴミを内部に貯留するのに対し、本製品はメッシュの管部分を側溝の川上に向けて設置し、側溝内部にゴミを浮遊させることで貯留ゾーンとして有効活用します。
 この構造によって、特に流出が問題視されているポリエチレンやポリプロピレンなどのレジンペレットが水に浮くため、浮遊ゴミの下層に設置された本製品は、ろ過面積以上に目詰まりしにくいという特長があります。(但し、排水の水位が著しく上下する側溝では、低水位時に下層のメッシュ管にゴミが付着して阻害される場合もあります。)
 従来、金網フィルターの掃除を毎日行っていた工場では、週1回の清掃で側溝から排水が溢れ出るという問題が解決されます。また、1年以上の長期にわたる使用継続が可能になります。

2.樹脂加工現場のニーズと商品開発の経緯
この製品を開発したきっかけは、セプトンコンパウンドというレジンペレットを生産している自社の工場現場から、「床に落ちたペレット屑が排水の金網を目詰まりさせ、排水が側溝から溢れ出て困っている。」という相談を受けたことです。
遡った話しになりますが、私はメッシュ管を排水性舗装用ドレン材として開発していました。さらには、舗装とメッシュ管で漉された雨水の中水道利用や、メッシュ管をホースに詰め込み循環温泉水の髪の毛ストレーナーを検討したこともあります。従って、「メッシュ管の三次元化で目詰まりをロングライフ化し、さらに側溝側でゴミを貯留する」という基本的なアイディアは、早い段階から持っていました。当初は、自社工場内の側溝からの溢れ防止という、まかない試作品で、その効果の範囲で満足していました。しかし、この試作に興味を持った営業マンが、「同じような問題は同業他社も持っているはずだ。」という推定から、商品化を目指しいろいろと情報収集を始めてくれました。
さて、情報が集まり出しますと、「競合相手のようなお客様に、どのようなルートでどのように販売して行くのか?」とか、「クラレの工場は回転式フィルタースクリーンを導入しているので、そんな問題は起こらないよ。」とか、最初は、クラレグループ内でも、否定的な意見が多くありました。私は、「この製品の機能は床の汚れを防止する程度で、自社の限定的な問題だったのかな?」と、一旦は商品化を諦めかけましたが、何社も何社も飛び込みで聞き回ってくれていた営業マンのおかげで、「工場からのレジンペレット流出が補償問題にまで発展している。」とか「日本プラスチック工業連盟(プラ工連)は金網による流出対策案を指導している。」というような情報を入手することができました。そこで、プラ工連様や、さらにご紹介いただいた環境団体・JEAN様にいろいろご意見を伺い、「レジンペレットの流出は環境問題であり、特に中小の樹脂成形加工業者では、たとえ問題認識や気持ちがあったとしても、大がかりな設備投資は難しい。」という現実に行き当たったのです。灯台下暗しで、全く自身の足下が見えていなかったのです。
振り返れば、このことに気付いてからの本製品の開発は迅速だったかもしれません。なにしろ自社工場で実地試験ができますし、私たちこそ悩んできた当業者そのものなのですから。このような経緯で、まかない試作品は各種の側溝形状に容易に対応できるように、切削可能な固定プレート部と任意にネジ固定できるメッシュ管を組み合わせた形状へと改良するに至りました。そして、現場で手軽に設置でき、レジンペレットの流出を防止することにより環境対策の一助となる、<クラドレン>たこ足フィルターが商品化されることとなったのです。

最後に、つい1年前までの自分自身を省みますと、自分たちの生産活動が環境に影響を及ぼしているという認識が薄かったと思い知らされます。つまり、会社の方針として環境ISOや法令遵守に沿っていただけで、環境に対しての興味や想像力が乏しく責任感を持って向かい合う気持ちが少なかったのだと思います。ウインドサーフィンをしながら大きな漂着ごみに舌打ちすることはあっても、砂にまみれたレジンペレットが私達のエゴの結果であり、環境の脅威だったということ … 胸に手を当て、樹脂成形に携わってきた入社以来の20年を振り返りますと、赤面せざるをえません。<クラドレン>たこ足フィルターを世の中に広めることによって、挽回できれば幸いと考えています。

 <クラレホームページでの紹介>
  URL:http://www.kuraray.co.jp/products/question/medical/kuradoren.html

概念図.jpg

たこ足フィルターの概念図

 

形状1.JPG

 

形状2.JPG

たこ足フィルターの形状

 

水位比較結果.jpg

たこ足フィルターと平面ネットの水位比較

 

 ※「クリーンアップキャンペーン2008レポート」(JEAN/クリーンアップ全国事務 局、2009年4月発行)より転載。この原稿は2009年に執筆されたものです。 

最近のエントリー
カテゴリー
注目のキーワード
ICC

↑このページの先頭へ