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通信:海に出かけよう!「子ども海ごみフォーラム」を終えて

2011年04月26日 カテゴリ:2008 , 美しい海をこどもたちへ

※「美しい海をこどもたちへNo.11」(JEAN/クリーンアップ全国事務局 2008年10月発行)より転載。この原稿は、2008年10月に執筆されたものです。

東シナ海ビーチコーミング友の会 阿比留忠明

 夏は子どもたちの季節だ。真黒に日焼けし、海や川に飛び込み、カブトムシを捕って、スイカにかぶりつく。それが日本の子どもの正しい夏休みである。まして島の子どもとくれば、さらに海に潜ってサザエを採ったり、お父さんの船に乗って漁を手伝ったりと贅沢な経験をしていた。わたしが子どものころの友だちは、男の子も女の子も海が遊びのフィールドだった。そして、みんな海からの恵みを享受し、海に癒され、海の怖さも自然にわかっていた。

 いつのころか、島の子どもたちでさえ、夏休みに海に行かなくなった。遊びが多様化した、家の前の海岸がコンクリートで固められた、漁業者が減ってきた、両親とも働きに出ている、などなど原因はいくつも考えられる。こんなことを書いている私も、この夏休み、子どもを一度も海水浴に連れて行っていない。

 子どもが海に触れる機会は、本当に減っている。海に行かないということは、海を知らないということにつながる。フナ虫をゴキブリと呼ぶだけならまだいいが、海の怖さに鈍感になっていく。さらに、海に無関心になっていくことはとても恐ろしい。海岸に漂着する大量のごみは、海への「無関心」が生み出した一面もあると思っている。

 子どもたちにもっと海への関心を持ってもらおう、海の環境が大変な危機にあることや、海は本当は楽しい場所なのだということを伝えよう、という思いで、この夏企画したのが、「子ども海ごみフォーラム」である。資金はトヨタ財団地域プログラムに応募し、何とか110万円を確保。離島同志の交流という目的に、対馬の豆酘小学校、五島の岐宿小学校がのってくれることになった。そして、このプロジェクトを進めるため東シナ海ビーチコーミング友の会を立ち上げた。メンバーは日本の漂着物界の重鎮たち。長崎大学の中西弘樹先生、東京大学院の清野聡子先生、理科の先生を目指す大我かおりさん、対馬でシーカヤックガイドをしている上野さん、日本の海ごみ政策をリードするJEANの小島さん、五島さん、佐藤さん。地元から横瀬さんと私阿比留。

 まず、豆酘小学校、岐宿小学校で授業の2コマをいただき、「漂着物教室」を実施した。
「漂着物教室」は大我さんの「漂着物講義」と中西先生の「ビーチコーミングのすすめ」の2本立てである。大我さんは、子どもたちに何種類かの海岸漂着物を「人工のもの」と「自然のもの」に分類させ、海がゴミだけでなく、遠い国からのロマンあふれるものや、自然の贈り物を運んでくれることを教えてくれた。大我さんの講義のあとは、実際に海岸に出かけ、中西先生によるビーチコーミング指導である。いつも見慣れた海岸でも、よく気をつけてみると、今まで気づかなかった生き物や植物の種などがあるものだ。(中西先生がどこの海岸でも椰子の実を発見されるのには驚いた。)


WS風景.jpg

ワークショップ風景

 夏休み前に開催した「漂着物教室」は、「子ども海ごみフォーラム」の序章であり、子どもたちにとっては事前学習であった。「漂着物教室」で、椰子の実や鹿の骨、ハリセンボンの死骸などに驚く子どもたちを、さらにわくわくさせる体験がまっていた。

 フォーラムには豆酘小の5・6年生11人、岐宿小の4年生6人が参加、2泊3日の交流を楽しんだ。勝手に心配していた年齢差は、初めて会う子どもたちにとってはほとんど関係がなかった。初日は顔合わせということで、子どもたち、スタッフ全員による自己紹介に始まり、事前に作ってもらっておいたお互いの学校や地域の漂着物を紹介するスライド発表。中西先生と清野先生による珍しい漂流物、海と人間の関わりのお話。JEANの小島代表による海ごみが生物に与えるダメージの話で構成する「あなたの知らない海の世界」でエキサイティングな3日間の幕が上がった。(本当に贅沢な講師陣です。)

中西先生とごみ拾い.jpg

中西先生とごみ拾い

 二日目は峰町の御前浜でビーチコーミング。御前浜の背後には海の神様である「綿津見神」の娘「豊玉姫命」を祀った「海神神社」がある。また、御前浜には昔、漂着した海藻を肥料にするために保管する「藻小屋(もごや)」という石積みの倉庫が残されていて、人々が海から恵を受けていた名残を見ることができる。当日は程よく漂着物があったが、残念なことに重油で汚れたものが多く、靴や服が汚れてしまった子どももいた。(最近、原因不明の重油が対馬のあちこちで季節を問わず漂着。海の神様も泣いている。)ここで子どもたちは、気になる漂着物とこの日の午後の漂着物クラフトで使う漂着物を拾った。気になる漂着物では、海岸に数あるアイテムの中から、外国のペットボトル、漁具、中国人民解放軍支給の食器、珍しい魚の骨など、気をつけてみると海岸にはいろいろなものが流れ着いている。中にはドイツ製のスプレー缶もあって、清野先生に初日に話していただいた、五島や対馬が海によっていろいろな国とつながっているということを子どもたちは実際に体験した。午後は、拾ってきた漂着物を海に似合うものと似合わないものに分け、なぜ海岸にごみとして流れ着いたのか、きれいな海を守るためにはどうすればいいのかを話し合った。さらに、御前浜で拾ったビーチグラスや貝殻で、キャンドルスタンドやフォトフレームを作った。子どもたちだけでなく、大人たちも童心に帰って「工作の時間」に夢中になった。


 最終日は、子どもたちが一番楽しみにしていたシーカヤック。天候が良ければ、対馬の中央部にあるリアス式海岸「浅茅湾」にある無人島にわたる予定だったのだが、あいにくの強風で東シナ海ビーチコーミング友の会のメンバーでもある上野さんの「対馬エコツアー」の艇庫周辺での体験となったが、子どもたちは海とのふれあいを思う存分楽しんだようだ。シーカヤックの良いところは、水面により近い「高さ」で海を実感できることだ。きれいな海を触ることもできるし、水面や海底のごみの目に入る。今回シーカヤックで行く予定だった無人島にも、少なからずごみが漂着している。無人島でも人間が原因となったごみがあることを見てもらいたかったが天候には勝てない。無人島にわたるという目的だけは達成できなかったが、子どもたちや関係者の熱意や努力により「子ども海ごみフォーラム」は無事に終わった。

 三日間のプログラムを終えた子どもたちには何が残ったのだろう。子どもたちには、体を動かして体験した、シーカヤックが最も人気が高かったようなのだが、シーカヤックだけでなく、ダイビング、ヨット、サーフィン、魚釣りなどのマリンレジャーもきれいな海がなければ成立しないということ(島の基幹産業である漁業もそうだ)、日ごろの生活で出るごみも気をつけなければ海に流れ出てしまうこと等々に気がついてくれて、この夏の体験を家族や友だちなど一人でも多くのひとに話してくれればと思っている。そして、海への関心や興味を持ち続けてほしい。

 私が今回のフォーラムで感じたことは、海岸にごみが多いからと言ってそんなに嘆くことはないということ。ごみが多いということは、豊かな海流があり世界とつながっているということなのだから。そして、子どもも大人ももっと海に出かけよう。それがきれいな海を守るための第1歩である。最後に、「子ども海ごみフォーラム」に関わっていただいた皆様に心からお礼申し上げる。

作品を手に記念撮影.jpg

 作品を手に記念撮影

阿比留忠明(あびるただあき)プロフィール
 1966年生まれ。対馬市在住。対馬市役所環境衛生課勤務。漂着ごみ問題に仕事としてかかわり始めて早4年余り。家庭では海岸で拾った雑多な漂着物が増えつつあり、またドラマや旅番組などテレビに映る海岸にごみを探してしまう。(職業病か?)次回「子ども海ごみフォーラム」の五島市開催を思案中。
 
 ※「美しい海をこどもたちへNo.11」(JEAN/クリーンアップ全国事務局 2008年10月発行)より転載。この原稿は、2008年10月に執筆されたものです。 

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