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通信:海でつながる対馬と五島 ~こども海ごみフォーラム2009イン五島~

2011年05月24日 カテゴリ:2009 , 美しい海をこどもたちへ

※「美しい海をこどもたちへNo.16」(JEAN/クリーンアップ全国事務局、2009年12月発行)より転載。この原稿は、2009年12月に執筆されたものです。

東シナ海ビーチコーミング友の会 阿比留忠明

 

 昨年8月に対馬で実施した「こども海ごみフォーラム」 今年は五島で開催しました。対馬からは昨年に引き続き、豆酘小学校の5、6年生13人、五島からは福江島の浜窄小学校6年生2人、久賀島の久賀小学校5、6年生4人。3つの島の3つの小学校から19人が参加してくれました。同じ長崎県にある対馬市と五島市ですが、距離もあり、二つの町を直接つなぐ交通手段はないため、両島の交流は極めて少ないのが現状です。また同じ長崎県の島でありながら対馬と五島では歴史、文化、自然、環境などあらゆる面で違うところがたくさんあります。今回のフォーラムでは、海の環境の大切さを学ぶことはもちろんですが、対馬と五島の違うところ、似ているところを探してほしいと思い、多彩なメニューを準備しました。

 

 1日目 飛行機を乗り継いでやってきた対馬のこども、船に乗ってやってきた久賀島のこども、そして福江のこどもたちは福江空港で待ち合わせて、五島のことを知るためのエクスカーションに出かけました。

 

 椿油精油所 椿油は五島の特産品のひとつです。精油所が何か所もありますが今回お邪魔したのは鬼岳樹木園の近くにあるJAごとうの精油施設です。油を搾る時期ではありませんでしたが、JAごとうの担当の方に、椿油ができるまでの工程を親切に教えていいただきました。精油された椿油はまさに黄金色。五島では、化粧品としてだけでなく五島うどんの製造に利用したり、最近では椿油入りのキャンディーも販売されています。何と対馬の人からも精油してくださいというお願いもあるそうです。植物の専門家である長崎大学の中西先生による椿に関する授業、樹木園で実際に椿を見たりしてとても充実した見学になりました。

 

 水の浦教会 白い天主堂が美しい水の浦教会は、岐宿町にある1880年に創建された(現在の建物は1938年に改築)木造教会堂としては日本で最大規模のものです。対馬では見ることのできない荘厳な雰囲気の立派な教会。地元の方に中を案内していただいたり、高台には五島出身の26聖人「ヨハネ五島」の像、弾圧時代の牢屋記念碑を見学して、信仰の自由を求めた苦悩の歴史の一部を見ることができました。

 

 高浜海岸 三井楽町にある高浜海岸は日本一美しいといっても過言ではない白い砂浜がまぶしい絶景の地です。対馬にはこれほど見事で広い砂浜はなく、対馬のこどもたちは大喜び、見慣れているはずの五島のこどもたちも一緒になって、歓声を上げて走ったり、貝殻を拾ったり、とうとう裸足になる子もいて大騒ぎ。この日は結構寒かったのですが、こどもたちには関係ないようでした。ここでも地元の方に、打ち上げられた貝殻が小さくなって砂浜ができることを教えていただきました。ちなみに私は冬の高浜海岸が好きです。夏もにぎやかで良いのですが、誰もいない波と風の音だけが響く冬の高浜は、視覚だけでなく聴覚にも訴える美しさがあると思います。

 

 三井楽サンセットユースホステルへ 初日のエクスカーションはここで終わり。宿である三井楽サンセットユースホステルへ向かいました。8人部屋なので男の子は全員同じ部屋、女の子は、対馬と五島の子が同じ部屋になるように部屋割。ユースホステルの心のこもった食事をいただいたあと、(こどもたちには、配ぜんの手伝いもしてもらいました)食堂をお借りして交流会に突入。豆酘小学校が作成した対馬や豆酘地区の紹介スライドを観たあと、誕生日順に並んで全員で自己紹介。(初対面のこどもたちもそろそろ仲良くなるころでしょうか)最後に行った班編成では、「つばきあぶーら66号」、「うどんZ」、「ブルーアクア」とこどもらしいユニークで突飛なグループ名がつけられました。(去年も大人にはおもいつかない名前だったので、今年もどんな名前がつくのかとても楽しみでした。)初日はこれで終了でしたが、なかなか眠れないこどもたちの部屋は結構遅くまでざわざわしていたようです。(修学旅行でさえ1泊2日なのに2泊3日の旅行に大喜びだったようです)

 

 2日目 朝から何となく怪しかった空模様、どうやら午後から雨らしいということで、プログラムを一部変更、ビーチコーミングを早めにして中西先生と中西ゼミの大我さんの漂着物授業を午後に変更しました。(雨男である私はひたすら申し訳なかったです。)

 

 魚見櫓見学 三井楽町には、伝統的なクロ(メジナ)の追い込み漁が残っていて、海岸沿いの小高い丘に作られた櫓から魚影を見つけ、海上の船に指示を出す「魚見役」をされている中尾さんにお話を伺いました。丘の上から見るとなるほど海底が砂地で魚がよく見えそうなきれいな海です。非常に原始的な漁法ですが海が汚れていればできない漁です。こどもたちも中尾さんの身振り手振りを交えた迫力のある説明に興味を持った様子でした。「櫓」という文字の成り立ちから考えると、「櫓」はそもそも魚を見つけるために作られて日本のあちこちにあったのかなという気がします。いつまでもこの漁法ができる海を守りたいものです。

阿比留さん原稿用 魚見役の中尾さん.JPG

 

 巌立神社 岐宿町にある五島藩の創始者が立てた格式高い神社で毎年9月15日には神楽が奉納されています。地元の方から、巌立神社の代々の宮司さんが阿比留さんという方で、ご先祖が延暦23年(803年)に立てられた神社の宮司として対馬に呼ばれたという話を伺い、対馬のこどもたちも不思議そうな顔をしていました。対馬で一番多い姓の「阿比留」さんが、かなり昔から五島とつながっていたのです。ちなみに五島には比留木さん、比留澤さんという姓もあるそうです。ここでは、昨年参加してくれた岐宿小学校のこどもたちが来てくれて1年ぶりのご対面というサプライズもありました。

 

 ビーチコーミング 思ったとおりしとしとと冷たい雨が降り出してきましたが、何とか海辺の宝探しはできそうです。中西先生のお薦めの海岸には、人工物、流木、生物などが大量に漂着、中でもギンカクラゲは足の踏み場もないほどです。こどもたちは班ごとに分かれてこれぞ宝物と思うものを拾い集めていました。お腹をすかせて海から帰ったこどもたちを待っていたのは、岐宿町の浜千鳥会の大町さんが五島の食材を使って準備してくれたお弁当と温かい豚汁でした。

 

 漂着物教室とビーチクラフト 午後は中西先生と大我さんによる漂着物教室。一目みただけでは人工のものかと思ってしまう海綿などを使いながら、クイズ形式で人工物と自然物にわけたり、火山の噴火による軽石の漂着により海流の経路が判明した話、グンバイヒルガオなど海流にのって漂着地で繁殖する植物の話、さらに、JEANの小島さんによる珍しい形をしたイルカの骨、ハリセンボンなどのフグの仲間がかじった跡が残ったプラスチックごみの紹介で、こどもたちをマニアックな「漂着物ワールド」へと誘いました。最後に、五島の地域おこしグループNPOアクロス五島の皆さんに「つ」を使ったビーチクラフトを教えてもらいました。「つ」とは五島の言葉で魚の「うろこ」のことだそうで、「つ」細工は着色した「つ」をネックレスにしたり、貼り付けて飾ったりするものです。ちなみに「かさぶた」のことも「つ」というそうです。九州北部では結構使うみたいですが、対馬では聞いたことがありませんでした。

 

 最終日 この日は、昨日と取り替えたいくらいの温かい良い天気でした。いよいよ最終日です。

 ワークショップ 今回のメインイベント「どこから来る?~どこへ行く?どうなる?」と題したワークショップでは、JEANの五島さんの進行により、ビーチコーミングで拾ってきた漂着物を海に似合うと似合わないものに分別したあと、どうやったらごみがなくなるのかグループとしての意見をまとめてもらいました。こどもたちは、二日間で植物、海流、漁業、歴史、宗教など様々な分野を体験しています。実際に見たこと、聞いたこと、触ったことを踏まえての意見交換は、なかなか見応えのあるものでした。保護者の皆さんや先生がたにも是非見ていただきたかったところです。3日間のプログラムはあっという間に終わり、お昼ごはんを食べて解散ということになりました。昨年、岐宿小のこどもたちが対馬空港でお土産を買ってくれたように、豆酘小学校のこどもたちも福江空港でお土産を抱えて帰りました。人気は、やはり五島うどんや椿油入りのキャンディーでした。

 

 最後に こうやって振り返って見ると実に多彩な内容でこどもを飽きさせない内容だったと思います。これは共催・後援いただいた皆さんのおかげです。もちろん開催時期が遅かった(11月の海は少し寒い)、資金不足、昨年のような事前学習ができずぶっつけ本番だった、関係者が一同に介しての打合せが一度もできなかった等々反省すべきことも多々あります。対馬と五島、同じ長崎なのに行ったことの無い人が圧倒的に多い中、こどもたちがこの経験を通して、海を大切にする気持ちを持ってくれるとともに、地域のことを見つめ直す機会にしてくれればともいます。最後に本事業に参加、協力いただいたすべての皆様に心よりお礼申し上げます。

教室集合写真DSC00528.JPG

 

 

阿比留忠明 プロフィール 1966年5月対馬出身。現在対馬市福岡事務所勤務。
                  対馬の観光物産のPRのため、博多に単身赴任中。

 

 

※「美しい海をこどもたちへNo.16」(JEAN/クリーンアップ全国事務局、2009年12月発行)より転載。この原稿は、2009年12月に執筆されたものです。

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